企業における情報管理体制について教えて下さい。

前回からの続きです)

3 情報管理体制のつくり方②

情報管理体制を構築するための次のステップは、企業が保有する秘密情報のうち、管理すべき情報を抽出することです。企業が保有する秘密情報は多岐にわたり、また膨大な量ですので、これらを全て高度のレベルで管理することは現実的ではありません。また、秘密情報の中には、特許権などの権利を取得することによって、法的保護の下で公開しつつ活用すべきものもあります。つまり、秘密情報の管理は、その重要度に応じた管理を行うことが適切であり、そのためには、管理すべき秘密情報の抽出・分類作業が必要となります。

まず、秘密情報の抽出にあたっては、個別の担当者の感覚によって判断のばらつきが生じないように、事業規模や扱う情報の多寡等に応じて、社内で統一的な判断が可能となるような方法が望ましいでしょう。例えば、経営者等の責任者が社内の各部署や担当者に対して直接ヒアリングを実施する方法や、秘密情報の管理を統括する部署が統一的な基準を示しつつサポートしながら、各部署や個別の担当者に、その基準に則してそれぞれが有する情報を経営者等の責任者に報告させる方法が考えられます。
ここで注意が必要なのは、「秘密情報」というのは、書類や電子データだけではなく、従業員が業務の中で記憶した製造ノウハウや、プラントのレイアウト、金型、試作品といった「物」も含まれることです。

次に、抽出した秘密情報を、複数の観点から検討して重要度の高いものから低いものまで分類します。複数の観点としては、例えば、その情報が生み出す経済的価値、他社に利用されたり漏洩してしまった場合の自社の損失の大きさ(どの程度競争力や社会的信用が低下してしまうのか等)、競合他社にとって有用か否か、悪用されるような性格の情報か否か、契約等に基づき他社から預かった情報か否か、等の観点が考えられます。

以上

労働新聞社「週刊 労働新聞」第3036号掲載・連載「管理者必見!! 実践的情報漏えい対策」第2回(小池啓介)の中ほど3分の1部分に加筆補正のうえ転載