使用者側から団体交渉を打ち切ることができるのはどのような場合でしょうか?

使用者と組合との主張が対立し、いずれかの譲歩により交渉が進展する見込みはなく、団体交渉を継続する余地がなくなったという状況に至っていれば、使用者が団体交渉を打ち切っても「正当な理由」(労働組合法7条2号)があり、誠実交渉義務の違反とはならず、不当労働行為には当たりません(池田電器(取消訴訟)事件・最二小判平成4年2月14日)。

 

そこで、上記「使用者と組合との主張が対立し、いずれかの譲歩により交渉が進展する見込みはなく、団体交渉を継続する余地がなくなったという状況」とは具体的にどのような状況をいうのかが問題となるところです。

 

この点、命令例を見てみると、打ち切りが認められなかった事例として、例えば、日本郵便事件(都労委平成27年11月10日)は、雇止めがテーマとなり、2回の団体交渉で会社が打ち切ったケースですが、

  • 2回の団体交渉において、会社は雇止めに関する根拠や理由について説明していたものの、組合が求めている説明や組合の質問に対する実質的な回答がなされず、説明が十分に尽くされたとはいい難いこと
  •  第2回団体交渉では、冒頭から説明が尽くされている旨の認識を示し、あらかじめ文書で用意した打ち切る際の発言を、終了予定時刻間際に読み上げて一方的に打ち切っており、会社は、団体交渉の進展状況にかかわらず打ち切ることを決めて第2回団体交渉に臨んでいたと窺われること

から、議論が行き詰まった状況に至ったという会社の主張は採用することができないと判断しています。

 

一方、打ち切りが認められた事例として、例えば、鳥井電器事件(都労委平成13年12月18日)は、解雇がテーマとなり、4回の団体交渉で会社が打ち切ったケースですが、

  •  会社は、組合から解雇理由の説明を求められて、解雇に至る経過を具体的に説明したこと
  • これに対し、組合は、ことごとく対立する主張を繰り返し、解雇撤回を要求し続けていたこと
  •  組合は、解雇に至る経過について双方が把握している事実の確認はひととおり終えたとの認識を示し、解雇撤回要求に対する回答を求めたのに対し、会社は、当人には能力不足等の問題があり、もはや職場に復帰させることはできないので、解雇は撤回しないと表明し、組合から再検討を求められたことを受けて行われた団体交渉でも、解雇は撤回しないと表明していたこと

を認定した上で、会社は、組合の要求及び主張に応じて具体的な説明及び主張をしていたものの、解雇撤回をめぐる双方の主張は平行線であり、重ねて団体交渉を行っても、相互に譲歩し、あるいは新たに提案するなどして一致点を見出し、合意を形成する可能性があったとは認められず、また、団体交渉打切り後、再開が有意義なものとなるような特段の事情変更があったとも認められないとして、本件打ち切りは不当労働行為には当たらないと判断しています。

 

これらの命令例を見ても分かるように、使用者による団体交渉の打ち切りが認められるには、お互いの要求が平行線で交渉が行き詰まっているというだけではなく、その前提となる主張とその具体的理由について一通り説明を尽くすことが必要です。

 

以上