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弁護士コラム

2011/12/14
【弁護士コラム】村田浩一弁護士「問題社員の解雇・懲戒処分について」

「問題社員の解雇・懲戒処分について」

弁護士 村田浩一

 近時、会社等に対する誹謗中傷、会社からの多額借入れ、損失隠し、詐欺、覚せい剤事犯、スマートフォンを用いた盗撮等、取締役や従業員が会社内外で問題を起こすケースを多く耳にします。

 このような場合に、問題を起こしたのが取締役であれば、会社は特段の理由なく当該取締役を解任できることになります。といいますのも、現行会社法では取締役の解任について、「役員及び会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができる。」(会社法339条1項)と規定され、取締役を自由に解任できるとされているためです(なお、同条2項は「前項の規定により解任された者は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる。」と規定しており、解任された取締役が会社に対して損害賠償を請求する余地はあります。)。

 では、問題を起こしたのが従業員であった場合、どのような帰結になるでしょうか。従業員の解雇については、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」(労働契約法16条)とされ、解雇は難しいと思われがちです。

 しかし、「問題」従業員の解雇についても、意外と多くの裁判例で解雇・懲戒処分が有効とされています。すなわち、従業員は、企業に対し、労務提供義務のみならず、企業秩序を維持遵守する義務(誠実義務)、秘密保持義務、使用者の名誉・信用を毀損しない義務などを負っており、これらに違反し、解雇につき客観的に合理的な理由があり社会通念上相当といえれば解雇が有効と判断されます。以下、上記問題のうち、会社等に対する誹謗中傷に関連し、解雇・懲戒処分が有効とされた事案をご紹介します。

 まず、従業員が上司の人格を著しく傷つける言動をするなどした事案(東京地裁平成14年5月14日判決)において、裁判所は、被解雇者について勤務成績の著しい不良や勤務態度の著しい不良、傷害事件を起こしたことも認定しつつ、「原告〔注:被解雇者〕は、ささいなことから興奮し、同僚や上司の人格を著しく傷つける言動をすることが頻繁にあり、上司から注意されても、反省の態度を示さず、同様の言動を繰り返しており、これによれば、原告は、同僚と協調して業務を遂行する意思や自制心を著しく欠いており、これは、被告〔注:会社〕の業務の円滑な遂行の支障になる程度に達していた」として、普通解雇を有効としています。

 また、高校教員が学校法人やその校長に対する誹謗中傷やマスメディアに対する情報提供などを行った事案(最高裁平成6年9月8日判決)において、裁判所は、被解雇者が「上告人〔注:学校法人〕の学校教育及び学校運営の根幹にかかわる事項につき、虚偽の事実を織り混ぜ、又は事実を誇張わい曲して、上告人及び校長を非難攻撃し、全体としてこれを中傷ひぼうしたものといわざるを得ない」と認定した上で、被解雇者の行為について「校長の名誉と信用を著しく傷付け、ひいては上告人の信用を失墜させかねないものというべきであって、上告人との間の労働契約上の信頼関係を著しく損なうものであることが明らかである」として、普通解雇を有効としています。

 さらに、内部告発との関係では、動物園職員がテレビ局に対して象の飼育・死亡に関する内部告発を行った事案(大阪地裁平成17年4月27日判決)において、裁判所は、「本件摘示事実の重要な部分が真実であるとの証明があるとはいえない。 また、原告〔注:被解雇者〕は、平成11年1月以降、ピコ〔注:死亡した象〕を飼育する立場にはなく、Eらも、平成12年8月以降、ピコの飼育担当から外れており、原告に正確な情報を与え得る状況にはなかったのであるから、本件摘示事実の重要な部分を真実と信じるに足りる相当な根拠があったということもできない」として内部告発の正当性を否定し、懲戒解雇を有効としています。

 そして、自己の見解の発表については、解雇の事案ではなく、停職3か月の懲戒処分とした事案ですが、公団職員がある道路の建設に関して用地確保、維持管理費等の観点から批判を加え、他のルートに変更のうえ建設すべきであるとの意見を新聞紙上に投書したとの事案(東京地裁9年5月22日判決)において、裁判所は、「本件投書の右部分は不相当な見解表明であったといわざるを得ない」と認定した上で、被解雇者の行為について「本件投書のように、従業員が職場外で新聞に自己の見解を発表等することであっても、これによって企業の円滑な運営に支障をきたすおそれのあるなど、企業秩序の維持に関係を有するものであれば、例外的な場合を除き、従業員はこれを行わないようにする誠実義務を負う一方、使用者はその違反に対し企業秩序維持の観点から懲戒処分を行うことができる」として、懲戒処分を有効としています。

 以上のとおり、会社等に対する誹謗・中傷に関連するものだけでも、従業員に対する解雇又は懲戒処分が有効と判断された事例は意外と多く存在していることから、「問題」従業員の解雇又は懲戒処分、特に、組織やその一員に対する誹謗中傷、人格を著しく傷つける言動、不当な内部告発、不相当な部分を含む見解の発表といった所為を行った従業員に対する解雇又は懲戒処分を検討されている場合には、「解雇はできない」と安易に判断せずに、労働問題を専門的に扱っている弁護士に早期にご相談頂くことが適切です。また、その上で、解雇を行った場合には訴訟等の紛争となることが多い実情に照らし、紛争に備えて布石を打っておくこと(注意や軽度の懲戒処分を行っておくこと等)や、やり取りを証拠化しておくこと(注意等を書面で行っておくこと等)が有効です。さらに、解雇に当たっては就業規則で解雇事由を規定しておくことも必要であるところ、弁護士にご相談の上、訴訟を見据えた規定をしておくことも不可欠です。

以上

 

 

 

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